死体は殺害されたとされるS氏ではなかった

1. 歯のレントゲンはS氏のものではなかった

発見された死体がS氏であるとされたのは、死体の歯とS氏が治療を受けていた歯科医師Iが提出したX線フィルムを照合したところ、両者は同一だとされた。
しかし、民事出廷したIが、証拠物であるフィルムを見て、左右を表すLRが正しい位置にあることに驚き、自身が提出したものは赤マジックで左と右を逆に書き込んであるはずだと証言を行った。Iは通常、フィルムには逆に書き込んでいたのである。
Iは後も証言している。「八月二十七日の午前中から昼にかけて刑事がフィルムを持って訪ねてきて、左右の位置が逆のようだから再検討して欲しいと言ってきた」と。Iの医院は東京渋谷にある。
この同日には、刑事が福岡市内の歯科医のところにも、逆の位置に右・左の文字が書かれているフィルムを持ってきていることが裁判記録に残されている。同日の同時刻に東京と福岡の両方に同じフィルムが存在していたことになり、どちらかが偽物であったといえる。